サンフランシスコのMUNI

アメリカ国内で7番目に大きい公営輸送機関

サンフランシスコを尋ねた人で、上部に網のように電線が張り巡らされている通りがあるのに気づいた人がいるだろうか。市内を走る電気バスは、本体上部から長い角のように突き出した2本のバーを通してその電線からパワーをもらって走っている。バスの運転手は基本的にその網の下を電線に沿って運転しなければならない。

ところが、道沿いに駐停車している車が飛び出し過ぎていたり、電線の下をうまく走っていても、路面がでこぼこでバスが異常に揺れたりジャンプしたりすると、時々、その突き出したバーが電線から外れてしまうことがある。そうすると・・・。運転手は徐ろにバスの外に出て、バスの脇に備え付けられている、先に半円のような金具がついた長い棒を取り外し、外れた角のようなバーの先をその半円にのせるようにして持ち上げ電線にうまく引っ掛ける。うまくつながれば、パワー回復でバスが動き始める。

こういった市内を走る市営のバス、路面電車、地下鉄には"MUNI"というサインが出ている。1912年にスタートしたMUNIは、アメリカ国内で7番目に大きい公営輸送機関で、現在では、平日で平均70万人の乗客を運ぶという。ディーゼルバス、電気トローリーバス、電気メトロ・ストリートカー、お馴染みのケーブルカーなど、全部で約1000車両をもつ。

ダウンタウンで働く多くの人たちは、J,K,L,M,Nという地下鉄線で通勤をする。毎朝、Embarcadero駅、Montgomery Street駅、Powell Street駅で下車をしてそれぞれのオフィスに向かう。この地下鉄線で面白いのは、市内の様様な場所から発車するJ,K,L,M,Nすべてのラインが、Van Ness Street駅から、Nラインを除くすべてのラインの終点駅となるEmbarcadero駅までの間、トンネルの中に入って単線(上りと下りは別線)となって、同じ線路を共有するところ。

朝の通勤ラッシュ時に何が起こるかというと、トンネルに入ってからのろのろ運転となる。トンネルの中で、電車がしばらく停車するというのも日常茶判事。通勤時間帯のために増便しているすべてのラインの電車が、共有するたった一本の線路に入ってくるのだから当然といえば当然。一番前の車両に乗って運転席近くに立つと、運転席へのドアについた窓を通して、前に詰まった電車の後部や駅が近い場合には、プラットフォームで前電車から乗り降りする人たちの姿が見える。

何せ、順番。先に追い越すことができないのだから、辛抱強く待つことが大切。「何か、東京のラッシュアワーみたいだ」なんて声を聞くこともあるけれど、本当の日本の通勤ラッシュを知らない人の単なる戯言。日本のラッシュアワーのように、詰めに詰められるなんてことは決してない。電車がのろのろ運転をして通勤時間が5分やそこら長くかかるだけ。支障はない。感謝しなくては…。

(2002/04)
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