| 「ご無沙汰しておりますが、お元気ですか?近くの銀杏の葉も黄金色へと色を変えました」筆書きの銀杏のイラストを添えたハガキが届きました。ポストの中で鮮やかに色づいたハガキが、そこだけとってもリラックスした空間を演出していました。差し出し人は....。半年くらい御無沙汰している出版コーディネーターの先輩でした。 でも、彼女。超がつくほどのデジタル人間。大の新しモノ好きで、ケータイも、パソコンも、デジカメも、インターネットも、メールも、誰よりも早く始めて、誰よりも便利に操っている人です。恥ずかしながら、この時代にあってもメールをしていない私をいつ鼻で笑って「文明の力を知らない人は人生を無駄にしているわ」と言うような人です。当然のことながら連絡事項はいつもメール(もちろん、私には届きません。私には電話かファックスでものごとを伝えなければいけないから、とても面倒だと言っていました)。電車の中でもパソコン片手に仕事をこなしたりしていました。 アナログをあんなにもあざけ笑っていた彼女から、筆書きのハガキが届くなんて....。 私はステキと思うより先に、彼女の身に何かあったのではないかと心配になってしまいました。さっそく彼女に電話をすると、いつも通りの元気な声が私を迎えてくれました。突然のハガキに天と地がひっくり返るほどビックリしたと言うと、彼女は勝ち誇ったように言うのです。 「でしょー?私ね、気づいたの。人間にはデジタルよりももっと大切なものがあるって」なにかと思えば、半年前に肺炎に近い状態になって、2週間ほど寝たきりで過ごしたと言います。その間に彼女、「何もしない自由と贅沢」を取り戻したらしいのです。 曰く「私、自分で言うのもナンだけど、すごく忙しいでしょ? 忙しいことが誇りだったの。でも、体を壊して初めてわかった。忙しくしてなくても大丈夫なんだって。っていうか、忙しくないほうがずっと心に余裕があって、いろんなことが見えるんだって」ベットの中で過ごした2週間で、雨の音を知り、風の匂いを知り、自分の心を知ったと言います。そして、今まで何年も咲いていることにすら気づかなかったあじさいの色も知ったそうです。 |
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| 彼女の分刻みの生活はデジタルに頼らなければ片づけられない毎日でした。便利さに頼って、それがなければ生きていけないライフスタイルは、気がつけばデジタルに依存する生活だったのです。 誤解しないでください。デジタルは人間が生み出した大切な大切な財産のひとつです。デジタルがあるから、私たちの生活はとってもラクチンになりました。ただし。それに埋もれて忘れてしまういろんなことは、本当はとっても大切なものだったりもするのです。 そして、彼女は忙しい毎日に戻ったいまでも「月に2度」と自分で決めて、あえてアナログなときを過ごしているのだそうです。携帯電話を持たずに散歩する、1日中パソコンの電源を切って読書する、手書きで手紙を書く。 そういえば自分が子供の頃はいつもこんなふうに過ごしていたと、とても豊かに、懐かしく、心穏やかになれると話してくれました。不自由の中にあるとても大切なこと。それを再認識するために、あえてアナログに戻る日が私も欲しいと思いました。 |
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