溶き卵は栄養的には不要

日本人が牛肉を食べるようになったのは、一般には明治維新以後でそれほど古くはないが、その味の良さから瞬く間に広がった。その料理法の中でも、すきやきは、日本人独特の食べ方で、欧米人がビーフステーキのように牛肉そのものの味をたしなむのに比べていろいろな野菜(白菜・ネギ・春菊・しいたけ)、豆腐、しらたき、調味料(醤油・みりん・かつお割り下)等を含む食べ合わせ料理なのである。牛肉の味が、加えた食材のすべてにしみ込んで、独特の風味がかもし出されているところが広く愛されているゆえんであろう。

栄養的にみても、必須アミノ酸を十分に含んだ牛肉のタンパク質、脂肪、野菜のビタミン・ミネラル・食物繊維のほか、大豆の良質の食物タンパク質も含まれている。すきやきには主に肩ロースが使われるが、脂肪分の多い霜降り肉が好まれる。他のロースに比べて筋が多いが、肉質は柔らかく、風味も良く、子供から年寄りまで食べられる。

すきやきは、日本人の食文化史上まれにみる健康的な料理と言えるが、ただ余分なものがある。それは溶き卵である。生卵は日本人の好みに合った食べ物なので、一概にその善し悪しは問えないのであるが、二つ問題点がある。

その一つは、コレステロールである。卵はタンパク質のほか、各種栄養素をバランス良く含む完全に近い食品であるが、コレステロールが多い難点がある。牛肉のコレステロールは89mg(100g中)(肩ロース)であるが、全卵は420mg(100g中)と5倍も多い。両者を合わせると、500mg以上にもなる。過剰栄養を避け、血清コレステロール値を正常に保つことは、高血圧などの生活習慣病を予防する上で大切な食習慣であることを考えると、溶き卵はすきやきには不要と思われる。その代わりに大根おろしのつけ汁は如何なものであろうか。
もう一つは、食品衛生面から「生卵」には問題がある。卵の賞味期限とは、生で食べられる期間のことであるが、新旧に関係なく、サルモネラ菌による汚染のことを考えると、生卵はでき得る限り避けた方が良いのである。

sponsors

sponsors
こちらの記事もお役に立てるかもしれません。