115.ハマグリ(蛤・文蛤・海蛤殻)—貝殻を焼いて粉末にして用いる—

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貝汁を塗ると美男に?

すでに紹介した牡蛎の殻と同様、貝類の中でも特に美味しいハマグリもその殻を漢方薬として用います。ハマグリは、浜にある栗のようなかたちをした貝、から来た名称であるという説と、浜にあるグリ(小石)に似たものという両説があります。マルスダレガイ科のお馴染みの二枚貝。へんな科名ですが、よく見るとマルい簾(スダレ)のような模様のカイ、とあの貝殻の模様の横縞をそのまま簾に例えた命名です。漢方では文蛤(ぶんこう・ぶんごう)と呼ばれますが、これも文様のはっきりした貝殻を現わした表現です。
二枚の殻のかみ合わせが他の貝とは合わないため、夫婦和合・円満のシンボルとして結婚式などの祝事に用いられます。一枚貝のアワビなどとは対照的ですね。また、殻の内側に金銀泥などで草花などを描き、一方の殻を地貝としてならべ、他方の貝を出貝として左右両側を合わせる遊戯の貝覆(かいあわせ)は江戸時代には上流家庭に流行し、その貝殻は豪華な嫁入道具の一つになったそうです。軟膏のケースとして、口紅のケースとして重宝されたので、今よりずっと身近な貝殻だったようです。

蛤は北海道の北方を除く日本全域の海岸や朝鮮・中国などの南部、比較的温暖な海岸に棲息します。夏に繁殖し、幼生はゼラチン様の紐を出して海水に浮かび移動するので、これを蛤の蜃気楼というそうです。古来食用として用いられてきたことは多くの遺跡から発見される貝塚などからあきらかです。吸い物が一番美味しいと私は思いますが、焼き蛤にするときはパカッと開いた勢いで汁がこぼれてしまうので、二枚貝の結合部をあらかじめ切っておくと失敗がありません。

チョウセンハマグリは殻が厚く、以前は九十九里浜など外海の砂底で採れましたが、碁の上等な白石はこの殻からつくられるのでゴイシハマグリの別名もあります。また、シナハマグリは朝鮮半島西岸や中国沿岸に分布し輸入されており、魚店で売られているハマグリは多くはこの種です。
蛤が日本の文献で初めて登場するのは『古事記』で、蛤貝比売(うむがいひめ)が、貝汁を塗って火傷をした神を治し美男にする話があります。漢方薬としては貝殻を焼いて粉末にし、喘息や胸痛、悪寒発熱、煩満などに用います。口渇を治す「文蛤散」や「文蛤湯」という処方も有名です。

医食同源ア・ラ・カルト項目一覧
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