2.麻の実(麻子仁・火麻仁・苧実・おのみ)—油が滋養作用を持つ—

「麻」はしびれるという意味

麻の実麻(ハシーシュ)のワイシャツなどはいまや贅沢品で、なかなか着る方は少ないですが、人類は古くから麻の繊維を衣類、ロープ、魚網などの原料として、実を薬用として用いてきました。クワ科の麻は高さが3メートル以上にもなる雌雄異株の一年生草で夏に小さな花をつけ秋に3ミリほどのちいさな扁平球形の実をつけます。茎を夏に収穫し皮をはいで蒸してほぐすと麻の繊維がとれます。紀元前1000年くらいには中央アジアからヨーロッパへ、東は中国から日本へも伝わり、弥生時代には日本で栽培も始まっていたようです。現在でも栃木県などで栽培されています。

もうすぐお盆ですが、迎え火や送り火に使うのは苧殻(おがら)で、お盆のあいだ家に帰ってきている故人が食べやすいようにお供えにそえるお箸を苧殻箸といいます。この苧殻は皮をはいだあとの麻の茎のことです。秋に収穫する麻の実(種子)が生薬としての麻子仁ですが、一般には苧実(ちょじつ、おのみ)として鳥の餌や七味唐辛子にはいっているので有名。
ここでクイズ。七味唐辛子の七味を全部あげてください。

苧実はプチプチした食感をたのしむものですが、油脂を豊富にふくみ搾った麻油は食用、工業用につかわれます。この油成分が大便を柔らかくし排便を促進するので漢方薬としては緩下剤の代表です。杏仁、桃仁などこのシリーズでも紹介してきたナッツ類も同じ作用があります。大黄やセンナなどでは強すぎるお年寄りや病後の方の慢性便秘に最適で、麻子仁丸やその名もずばり潤腸湯などが有名な処方です。もうひとつ虚弱な方の動悸や不整脈に使われる炙甘草湯という、やはり有名な処方に配合されますが、これはこの油の滋養作用を強調したものです。

さて麻といえば麻薬としての大麻(マリファナ)を思いだしますが、これは実ではなく雌株の未熟果穂や枝先の葉を使います。二千年前中国の伝説の名医華佗はこの大麻を使って麻沸散という麻酔薬をつくり、手術をしたと伝えられます。麻薬の麻はしびれるという意味(麻痺)で、魔薬とは書きませんね。
さて、さきほどのクイズの答え。京都では七味、江戸では七色とんがらし。唐辛子、麻の実、山椒胡麻、菜種、芥子陳皮海苔などなどから江戸時代につくられた和製混合スパイス。地方や製造元によりすこしづつ異なります。これらのほとんどは、すでにこのシリーズで紹介済みです。

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医食同源ア・ラ・カルト項目一覧
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