| ●おやつになった甘さ |
| 私が育った東京の家の庭に一本の大きな渋柿がありました。渋柿とはいっても |
| 晩秋になりすっかり熟してくると、モズがつっついたりしています。敗戦直後、 |
| まだ甘いものが手に入りにくい頃、おやつを欲しがる幼い私に母親がごわごわの |
| 柿を食べさせたといいます。私がひとこと「アーマイ」といったときの感激が忘 |
| れられないといいます。食べさせるものがないと思っていたから「神の助け」と |
| と涙が出たといいます。 |
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| この話は私がもう少し大きくなって何か我が |
| 儘を言うといつも持ち出されるエピソードで、 |
| 「物がないなかでおまえを大きくしてやったの |
| だからゼイタクいうな」。物不足を知らない今 |
| の母親たちの子供のしつけの難しいのはよくわ |
| かります。 |
| さて柿ですが、原産は中国揚子江流域といわ |
| れ、日本にも大分古く伝わってきたようですが、食用として栽培されたのは奈良 |
| 時代以降、甘柿栽培がされたのも日本に於いてです。欧米にも伝わりましたが、 |
| それはつい200年くらい前の比較的新しいことです。 |
| ●様々な薬効 |
| 「柿が赤くなれば医者が青くなる」とは秋の天候のよい時期には病気がない、 |
| という意味だと思いますが、柿にはいろいろの薬効があるという意味でもあるで |
| しょう。 |
| 漢方の世界でいちばん知られているのは、シャックリ止めの柿蔕。柿の実のヘ |
| タです。これを煎じて飲むと、シャックリや吐き気が止まります。柿漆(しし |
| つ)、これは渋柿のことで、以前にはこの渋を和紙でつくったウチワや傘などに |
| 塗ったもの。現在では日本酒の清澄剤に使われます。主成分はシプオールという |
| タンニンで高血圧や脳卒中後遺症などに使われます。柿霜、これは柿餅(干し |
| 柿)の表面の白い粉のこと。これはマンニトールやブドウ糖などの糖類で肺の潤 |
| し咳を止めます。柿餅は、ご飯が炊きあがる前にカマの中に入れ、充分むらせて |
| からとり出すと、ベトーッとなっていますからこれをスプーンで小児に与えま |
| す。下痢を止めたり胃腸を丈夫にします。柿葉はこれは柿の葉茶として有名ですね。 |
| やはり降圧効果があるなどといわれています。まさに、柿の木が一本あれば(渋 |
| 柿でもよい)医者もまっ青です。 |
| 最近はさまざまなお洒落な果物に押されて、日本中にあるのは放置されている |
| この多い柿ですが、利用したいものです。 |