| ●クワバラ、クワバラ | |
| クワは、中国、朝鮮半島を原産とする落葉高木。北半球温帯から亜熱帯にか | |
| け、14種類あり、中国にはそのうち8種あるといわれますが、一般的には、薬草 | |
| 園の畑の周辺にあるようにヤマグワが自生しています。 | |
![]() 写真提供(株)ツムラ |
ご承知のように、桑葉は久葉(クワ)とも自 |
| 称し、久う(食う)葉、即ち蚕が食う葉です。 | |
| 中国では3000年前からこの桑の葉で養蚕がさ | |
| れており、日本にも奈良朝以前に伝来し、日本 | |
| 書紀や万葉集で早くも歌われています。なにし | |
| ろこの葉を食べた蚕から絹糸ができるのですか | |
| ら、付加価値は抜群で、昔から聖木と仰がれ、 | |
| 桑畑には雷が落ちないと言い伝えられるよう | |
| に、独特の霊力があると思われてきました。雷 | |
| が落ちたり、恐い思いをすると、「クワバラ、 | |
| クワバラ」と言いますが、それは桑の原のことです。 | |
| 桑の枝葉は伸びるのが早いですから、養蚕業の方々は年に4回も5回も繭玉を | |
| 出荷することができます。蚕の食べ盛りの幼虫の時に、小枝を切ってそのまま与 | |
| えますから、桑畑をローテートして使ってゆくと、元に戻る時には枝葉がまた伸 | |
| びているという仕掛けです。先年、所沢に残っている養蚕家を訪ね、見学させて | |
| もらいましたが、お腹いっぱい桑葉を食べて、まるまる太り食欲が落ちてくると | |
| 糸を吐きサナギになる準備。隣の蚕とからまないように一片3cmくらいの枠に | |
| 入って、そこで繭玉をつくります。一年中目の廻るような忙しさなのに絹の価格 | |
| は下落。本格的に補助金を出さないと、中国の安価な絹には太刀打ちできるはず | |
| もなく、養蚕家にはもう後継者はいないということです。 | |
| 養蚕に葉を使用する他に桑葉は、お茶として売られています。果実は桑椹(そ | |
| うたい)といって食用や果実酒に。酒や醤油の醸造にも加えられます。木材は建 | |
| 築、家具、農具、楽器に。内皮の繊維は製紙業に。ちなみに、和紙の原料になる | |
| 「こうぞ」もクワ科の木です。 | |
| 漢方薬として、処方に組み込まれるのは根の皮で、これを桑白皮といいます。 | |
| 喘息のくすりなどに配合されます。おもしろいのは金創(刀創、外傷)に用いら | |
| れる処方に組み入れられる桑白皮には、特に南東方向に伸びた根皮を使うという | |
| 指定をした古医書があることで、現在でも、使われなくなった桑畑を買いとり、 | |
| 印をつけて、その南東に伸びた根だけを用いて処方を作っているという、古書に | |
| 忠実な、非常に凝り性の漢方家たちがいます。 | |