| 今回は羊肉。マトンです。このシリーズでは動物性のものは少なく、牡 |
| 蠣、蜂蜜、阿膠、鶏子黄くらいのものですが、今回のように食肉そのものと |
| いうのも珍しい。 |
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30年前の北海道の滝川牧場。入り口で |
| 七輪とジンギスカン鍋を借り、炭とマトン |
| を買い、持参したのはタマネギやピーマ |
| ン、モヤシ。美しい広々とした緑の丘陵を |
| どこまでも進んで、好きな所に陣取りま |
| す。鍋を囲んでワーワーやっていると、ご |
| く近くを羊の群れがメーメーいいながら通り過ぎます。牧童が導いていると |
| いう感じはしなかったし、シェパードが列を乱す羊を追い立てていたという |
| こともなかったようですけど。私どもはてっきりその羊の肉を食べていると |
| 思って「残酷だー」から、「新鮮だ!!」までいろいろもりあがりましたが、 |
| 後日、あれは羊毛の為の飼育であって、北海道名物ジンギスカンの肉はすべ |
| てニュージーランドからの輸入であると聞かされて、拍子抜けした思い出が |
| あります。 |
| 3年前の夏、中国の北方、内モンゴル自治区近くの砂漠。甘草という漢方 |
| 薬の自生地を見学したときの羊も思い出します。ぐるり 360°地平線がは |
| るかに見渡せる平原というものに初めて立つ経験をしましたが、羊の群れを |
| 追っているのは、これは牧童か牧翁かもしれないが、いかにも世界の秘境的 |
| な絵になる映像でした。近づいても平気な羊たちが食べているのは甘草の |
| 葉。これくらい食われてもその糞の方が甘草にはありがたいわけで、根はよ |
| く伸び、掘り起こされて私共の漢方薬に利用されます。この地方の羊肉は胃 |
| が痛いときの薬だと聞いて、鎮痛作用のつよい甘草の葉を食べていると肉に |
| もそんな薬効があるのかとビックリしました。 |
| 「美」の字は、「羊」の下に「大」、つまり「まるまると肥えた羊」とい |
| う意味。だから「美」とは「旨そうだ」「美味しそうだ」の方が字の本来の |
| 意味です。ビューティフルはそれから派生した意味です。 |
| 漢方薬としては当帰生姜羊肉湯という、羊肉を当帰と生姜の二つの生薬の |
| 香りで煮込んだ名前そのまんまの薬が有名です。お腹が冷えきって痛みがつ |
| よいときこのスープを飲め、出産後の婦人が、腹痛をおこして体力が弱って |
| いるときにも飲むようにと指示があります。おくすりか食品か区別できない |
| 薬膳スープです。 |