68.サフラン(顔夫藍・番紅花・蔵紅花)—健胃剤、精神の鎮静剤、通経剤—

贅沢な生薬・スパイス

サフランはアヤメ科の多年草、クロッカスの仲間、植物分類的には単子葉植物に属し、ユリ科やヒガンバナ科と兄弟で、細い葉などよく似ています。イヌサフランと呼ばれる似た植物はユリ科です。球根(鱗茎)で増え、夏の終わりに植えつければ11月には花が咲き採取できます。 薬品やスパイスとして使うのは、淡紫色の花弁の外にたれ下がるように出ている三つに分かれた鮮やかな紅色の雌シベです。雌シベの重量はわずかだし、しかもその基部はだめで、先端の方(柱頭)のみ使うというのですから、良質のサフラン500gつくるのに花は六万本以上必要です。まことに贅沢な話で、もっとも高価な生薬・スパイスといえます。

サフランの原産地は地中海沿岸といわれ、エジプトのパピルスに記載されていたというのですから歴史は古い。ヨーロッパでは、健胃剤、精神の鎮静剤、通経剤などに使われていました。先述のイヌサフランにはコルヒチンが含まれていますが、コルヒチンは現在も痛風の薬として使われているように、サフランも古代美食貴族の痛風の薬としても使われていました。

中国では、だいぶん下って、16世紀の医書に「番紅花・蔵紅花」として登場します。菊科の紅花(ベニバナ)に似ていて、漢民属の周辺、西域(番)やチベット(蔵)からもたらされたものという命名です。「回回の地(今話題の回教ーイスラム教圏)からもたらされた」という記載があります。日本にはもっと最近、明治になってから、神奈川大磯で添田辰五郎という人が初めて栽培に成功したといわれます。

雌シベの薬効成分はプロトクロチンと考えられ、これが順次酸化して、クロチン(黄色色素)、ピクロクロチン(苦味)、サフラナール(芳香)などが発現すると考えられます。このうち黄色色素は、スペイン料理パエリヤの着色料として有名。フランス料理のブイヤベースにも欠かせないし、サフランケーキも有名です。苦味や芳香は漢方的薬効としては、活血、通経、清心、つまり血をきれいにして、特に婦人の経を通じ、心を安定させるというわけで、先述の古代エジプトの使い方と似ています。
現在使われる漢方処方に組みこまれていることはありませんが、最近薬効が見なおされ、漢方的に少しづつ使われはじめました。日常的にはサフラン酒、サフラン茶として使うとよいでしょう。

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