81.セッコク(石斛・デンドロビウム)—代表的な補陰薬—

観賞用としては高価

石斛は、単子葉植物のラン科に属し、日本では岩手県以南の本州から四国、九州に分布し、セッコク、キバナノセッコクの2種があります。海外ではインド北部から中国、マレーシア地域、さらにオーストラリア北部や太平洋諸島まで広く分布するランで、岩の上や大木に着生する着生植物です。
薬用にされることから記紀神話の医療神である少彦に因んだ少彦薬根(すくなひこなのくすね)の古名があります。デンドロビウムは、ギリシャ語の「デンドロ(樹木)」と「ビウム(生ずる:生命)」に由来し、野生では樹木や岩に着生していることからの名称。イワグスリ(岩薬)の古名もあります。

単子葉植物といえば、このシリーズで登場済みのユリをはじめ、タマネギやショウガ・ミョウガ、サトイモなど、地上の茎は発達せず、地下茎からいきなり葉柄を出して大型の平行葉脈の葉を出している共通点がありますが、食用になるのはみな地下茎です。ラン科は、地上に茎を出していますが、この石斛の地上部の茎は節状になっており、ひとつひとつが樽=斛に似ているため、石に付着している樽で石斛。
花や葉を観賞するため栽培され、畑の隣りの「富士見ラン園」でも、石斛を栽培販売しています。葉の変異品が江戸時代より長生(ちょうせいらん)と呼んで栽培されてきましたが、近年は花の美しさも注目されて、濃紅色、紅色、丸弁などの変異品も珍重されて、値段はびっくりするほどですよ。

特徴は、茎が多肉の棒状になって立ち上がることで、主成分の澱粉やアルカロイドなどの薬効成分もこの多肉の茎にあるので、クスリとしては全草あるいは茎を乾燥して用います。
花は、蘭の花としては、比較的特徴の少ない形で、唇弁は他の弁より丸くて大きいだけで、特に変わったところはありません。花が茎の節ごとに短い柄の先に1つづつ着くのがノビル系、茎の先端から長い穂状花序を伸ばすのがファレノプシス系で、これがパーティ会場を飾る胡蝶蘭。このような栽培のための採集によって、野外の個体数は激減し、昭和50年代までは神社の境内の木に大株の見られることもありましたが、現在ではそのようなものはすべて取り尽くされました。
漢方薬としては代表的な補陰薬で、ユリ科の麥門冬などが肺の陰を補うのに対して、石斛は胃の陰を補うとされ、健胃、強壮作用、美声薬にもなり、お茶として飲用もされます。

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