7.漢方薬と現代薬とどちらを選ぶのか?(5.いろいろな痛み)

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今回は痛み(ペイン)のおはなし。特に主として体の表面に近いところの痛みのおはなしです。
これらは命には別状ないけれども、とてもつらいし、長期にわたる慢性の頑固な痛みになると、性格まで憂鬱になってくる方も多いのも止むを得ないことと思います。
外見が何ともないと他人にはわかってもらえないし、つらさもひとしお。

身体の上からざっと挙げてみても、(1)偏頭痛(2)三叉神経痛(3)ムチ打ちなど(4)肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)、胸背部に多い(5)帯状疱疹後遺症の痛み、それから最も多い(6)腰痛(慢性・急性ふくめて)、腰から脚へかけていたむ(7)座骨神経痛、それから何と診断してよいかわからない、みなさんがよく言うところの(8)神経痛、中年以降の女性に圧倒的に多い(9)股関節炎や(10)膝の腫れ痛み(変形性膝関節症)などなど。

薬のフィールド

(1)偏頭痛

前駆症状(目がバチッと光る)があり、嘔吐を伴うような典型的な偏頭痛は、原因としてアレルギー説を私は支持します。市販の鎮痛剤で効くなら、その時々に服用するのはやむを得ないでしょう。

漢方薬を服用してその場で治まるということは、あまりありえません。少し長期の服用が必要です。何故なら、女性に多いことから考えても、また閉経後は急速に減少していくことから考えても、アレルギーの引き金のひとつに女性特有のホルモンの問題があることは確かだと思うからです。
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同じ偏頭痛でも、肩から後頸からはってきて、後頭部がはり痛むという、いわゆる筋緊張性頭痛は、漢方薬が効きやすいし、こった筋肉をほぐすという意味でもハリ治療の直接の対象となります。
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(2)三叉神経痛

重症の方は、専門のペインクリニックでブロック等の治療をお勧めしますが、これとて全例有効というわけにいかず、漢方薬やハリ治療をもとめて戻ってくる方も多くいます。日常生活を何とかやっていける程度のものは [漢方薬+ハリ]がいいでしょう。
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(3)ムチ打ち等

外傷後の首の痛み、腕のしびれ等は、しばしば「頸椎がズレている」と整形外科医がいうようです。どうするかというと「牽引」。身体の痛みの原因を、簡単なX線撮影で写る唯一のもの「骨」の変化で説明しようとする悪習慣が、未だに整形外科領域ではあるようで、患者さんから話を聞くたびに、情けない思いがします。A領域でやればいいのに、と思うことが多い領域です。
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(4)肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)

もちろん現今では六十肩・七十肩の方がざらです。診断名としては肩関節周囲炎と呼びます。周囲というところがミソで、じつは膝関節炎なども膝関節周囲炎という方が適切です。
「関節の痛み」というビデオででも述べていますが、人間の関節(ジョイント)はとても不完全で、周囲の筋肉や腱がカチッと固めているから、ようやく関節の用をなしているのです。当然、無理がかかり炎症を起こすのもここです。当院でハリや投薬で痛みを軽減してからとことん暖めれば、ほとんど短期間によくります。

よく四十肩はほっておいてもいずれよくなると、放置している方がいますが、早く治した方がよいはずです。
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(5)帯状疱疹後遺症

最近は帯状疱疹がやたら多いという印象をもちます。これは幼い頃にかかった水痘ウイルスが身体に潜んでいて抵抗力がおちたときに身体の表面に繁殖する病気です。
ウイルスですから直接に効くお薬は何もありません。皮膚科などでお薬を出したり、クリームを出したりしますが、じつは何もしない方がよいです。こすったり、薬をつけたり、洗ったりしないように。いじくるとあとで恐ろしい痛みがでてきます。当院は投薬のみで後遺症の痛みをほとんどなくしています。
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(6)腰痛(7)座骨神経痛

腰痛の中にはギックリ腰のようないわば腰関節の捻挫と、腰椎の中心から両方の足へ伸びている座骨神経がどこか圧迫されておこる座骨神経痛があります。椎間板ヘルニアは、この座骨神経痛の原因のひとつです。
100の腰痛のうち、座骨神経痛は10くらい、そのうち椎間板ヘルニアが原因なのは1つくらいといわれています。腰痛というと、骨の写真をとり、すぐ椎間板ヘルニアだという整形外科医が多くて、皆さんも腰痛はみんなヘルニアと思っているようですが、それは間違いです。いずれにせよ、腰痛を起こしたら丸まって寝ていることです。歩けるようになったら来院してください。
ほとんど問題なくなおります。
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(8)神経痛

一昔、二昔までは、「神経痛です」という患者さんが多くいたものです。大腿の中心などが、ズキーン、ゾクゾクという何ともいやな痛みにみまわれ、なるほど「神経痛」という呼び名がふさわしいけれど、はてさてどうしたものやら。明治初期にナーヴ(nerve)という医学用語を「神経」と翻訳しました。それまで医学の主流であった漢方医学の用語から神=心=気といった「神」と、経脈とか経穴(ツボ)とかの「経」をとって、気のようなものが流れる道として「神経」という用語を作ったのです。

この「神経」というコトバは、作られてまもなくから、早くも精神・気持ちとかいったニュアンスを帯びるようになり、「神経衰弱」などという言葉も精神科で使われ、三遊亭円朝はこの意味での神経をモジって、「真景(神経)累ケ淵」という怪談をつくり大評判をとりました。皆様も「食欲がないのは神経のせいでしょうか?」などとよく使いますよね。

話をもどして「神経痛」には、ものとしての神経が痛んでいるというのと、それはとてもいやな痛み、神経(気持ち)が滅入るような、参っちゃうような痛みであるのとの両方の意味合いがこめられているようです。座骨神経(の)痛(み)、三叉神経(の)痛(み)と診断できるもの以外に、何とも診断しがたいような「神経痛」を訴える方は、最近ではとても少なくなりました。これは居住環境や労働環境の変化で、身体を芯から冷やす機会が大幅に減ったことによると思われます。ホカロンの発明も大貢献したでしょう。漢方薬では、大熱剤といって身体を強力に暖めるブシとかカンキョウという薬の出番です。
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(9)股関節炎

中年以降の女性に発症しやすい、まことにやっかいな病気です。最終的には股関節の形成術をすることになる方もおられますが、手術をしても何年くらい効果をもたせられるか、まだ不確かなものですから、相当の年令になるまでは勧められません。漢方薬とハリ治療で何とかもたせている、患者さんに頑張ってもらっているといった現状です。
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(10)変形性膝関節症

これも中年以降の女性に多い膝が腫れ痛むというあれです。右が痛いと左を主に使いますから、そのうち左も腫れてきて、膝をかばっているとそのうち腰が痛くなる、といった具合でなかなか始末がわるい。
よく「水がたまる」といいます。すぐ水を抜く整形外科医が多いのですが、この水は炎症という火事のあとに残った灰のようなものですから、水を抜いてカマドの灰を掃除したようなもので、また新たに燃え上がりやすくしているようなものです。

当院では原則として水を抜くことなくずいぶん多くの膝をなおしてきました。骨切り術をすすめられたほどのすごいO脚になった患者さんで、手術をせずに頑張った方がいます。初めは、六本木駅から当院まで20分以上かかってやっと歩いてきましたが、今では7~8分でサッサと歩いて来られるようになりました。
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