NAFLD(非アルコール性脂肪肝疾患)は肝臓のメタボリックシンドローム。歯周病は、NASHへの進行因子とも考えられる

歯周病

歯周病は、「サイレント・ディジーズ(沈黙の病気)」です。他の生活習慣病(糖尿病・高血圧・心臓病など)と同じように、自覚症状が余りなく、気がついたときには、「エ!」と心臓に悪いぐらいの症状を示されることもあります。

肝臓のメタボリックシンドロームであるNAFLD(Non-Alcoholic Fatty Liver Disease):非アルコール性脂肪肝疾患からNASH(Non-Alcoholic Steatohepatitis):非アルコール性脂肪肝炎への進行病因の可能性が、指摘されています。

成人の80%以上が歯周病

平成26年厚生労働省の「患者調査の概況:歯肉炎及び歯周疾患の総患者数」は、331万5000人で、約6割弱が女性。男性より多くなっています。平成23年公益財団法人8020推進財団「歯科疾患実態調査」によると、成人の80%以上が歯周病にかかっており、ピークは、55~64才です。既に5~14才で30%以上、15~24才で、70%の人に、歯茎の炎症が見られます。歯周病=中高年というイメージがありましたが、お口の中の健康は、年齢に関係なく、誰でも気をつけなければならない健康長寿への道です。

歯周病と肝臓疾患の関係

横浜市立大学大学院医学研究科肝胆膵消化器病学教室の中島淳主任教授(現在)のグループは、NAFLD(Non-Alcoholic Fatty Liver Disease):非アルコール性脂肪肝疾患と歯周病の重要な原因病原体であるPorphylomonas gingivalis (P. g.菌)(ポルフィロモナス・ジンジバリス)の感染との関係を発表した。

研究は、肝生検によってNAFLD(非アルコール性脂肪肝疾患)と診断された150名の患者:NASH(非アルコール性脂肪肝炎)102名+NAFL(非アルコール性脂肪肝)48名と60名のnon-NAFLD(非アルコール性脂肪肝疾患ではない)を対象に、口腔内の歯周病菌検出を行った。

結果は、P. g.菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)の検出は、NAFLD(非アルコール性脂肪肝疾患)患者:non-NAFLD(非アルコール性脂肪肝疾患ではない)対象群=46.7%:21.7%、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)の患者は、52.0%で、non-NAFLD(非アルコール性脂肪肝疾患ではない)対象群と比べて、著しく高い値を示した。

結果は、P. g.菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)の検出は、NAFLD(非アルコール性脂肪肝疾患)患者:non-NAFLD(非アルコール性脂肪肝疾患ではない)対象群=46.7%:21.7%、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)の患者は、52.0%で、non-NAFLD(非アルコール性脂肪肝疾患ではない)対象群と比べて、著しく高い値を示した。

研究者達は、「P. g.菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)の高毒性による感染症は、NAFLD(非アルコール性脂肪肝疾患)の促進とNASH(非アルコール性脂肪肝炎)の進行のさらなる危険因子ではないか」と、締めくくっている。

「多くの先進国で増えているNAFLD(Non-Alcoholic Fatty Liver Disease):非アルコール性脂肪肝疾患は、肥満・脂質異常症(高脂血症)・2型糖尿病のような、多くの因子と深く結びついているメタボリックシンドロームにおける肝臓の兆候である」 「NAFLD(非アルコール性脂肪肝疾患)の進行と、その他の疾患との関連性は、はっきりしていない。近年になって、歯周病と全身性疾患の発症との関連性に注目が集まっている」とも述べている。(訳:tori3toiri3)

(BMC Gastroenterology 16 February 2012)

増えている「非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)」

「脂肪肝(肝臓の組織に脂肪滴を伴う細胞が30%以上認められる状態)」は、健康診断で20~30%の人が、言われる症状です。友人、知人、家族も含めて良く言われています。以前は、アルコールによる「脂肪肝」が多かったのですが、昨今は、飲酒歴がなくても生活習慣病によっておこる脂肪性の肝障害が、増えつつ有り、「非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)」と呼ばれています。

「非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)」は、大きく、非アルコール性脂肪肝(NAFL)=単純に脂肪が肝臓に溜まるタイプと非アルコール性脂肪肝炎(NASH)=脂肪が溜まるり炎症や線維化が促進されるタイプに分けられます。
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)になると、肝硬変に進行し、肝細胞がんに至る可能性が指摘されます。

NAFLDの日本における有病率は、9~30%、女性より男性に多く見られ、年齢層では、男性:中年層、女性:高齢層に多いようです。
肥満人口の増加と平均BMIの増加に伴い、増えています。欧米では、既に、NAFLD/NASHの罹患率は、約50%と右肩上がりの傾向が見られています。

脂肪肝を疑われたら、主治医と相談して、生活習慣の改善を行い、食事の見直しや、運動を毎日の生活に取り入れ、健康体なカラダを取り戻し、維持し続けることが、重要です。適切な体重管理が、欠かせません。余分な脂肪は、早めに落としましょう。

  • NAFLD(Non-Alcoholic Fatty Liver Disease):非アルコール性脂肪肝疾患
  • NAFL(No-Aalcoholic Fatty Liver):非アルコール性脂肪肝
  • NASH(Non-Alcoholic Steatohepatitis):非アルコール性脂肪肝炎

歯周病は、細菌感染症

歯周病を重症化させる可能性が、指摘されている3種類の菌群は、Red Complex (レッドコンプレックス)と呼ばれています。口内に常在しているとされる約700種類以上の細菌群で、抜きん出ているTop3です。

レッドコンプレックス(Red Complex)/3種の菌

  1. Porphylomonas gingivalis (P. g.菌)(ポルフィロモナス・ジンジバリス)
  2. Treponema denticola (T. d.菌)(トレポネーマ・デンティコラ)
  3. Tannerella forsythensis (T. f.菌)(タネレラ・フォーサイセンシス)

レッドコンプレックス中、NASHと最も深い関わりがあると考えられているのは、Porphylomonas gingivalis(P. g.菌)(ポルフィロモナス・ジンジバリス)です。

特徴
  1. 慢性歯周炎の原因菌である。
  2. 強力な付着力あり、バイオフィルムを作る。
  3. 内毒素(endotoxin)が、歯の骨を溶かし、悪臭を放つ。

歯周病が不安になったら

歯周病度チェックができます。
 公益財団法人8020推進財団ホームページ
お住まいの近くの歯周病専門医が探せます。
 日本歯周病学会認定医・専門医

肝臓は、「沈黙の臓器」

原発性肝がん(肝細胞がん)の約80%は、B型かC型の肝炎ウイルス由来とされています。肝炎ウイルスにかかっていても、自覚症状が無いまま過ごしている人も多いのではないでしょうか。 飲み薬による抗ウイルス療法が行われ、肝細胞癌の発生が抑えられるようになってきたようです。

一方、最近は、肝細胞がんの発症のうち20%程度を占める、非B非C型慢性肝疾患によるものが増加傾向にあり、NAFLDからNASHの可能性が指摘されています。
健康診断で「脂肪肝」と言われたら「アルコールもあまり飲まないし私の肝臓は大丈夫!」と楽観視していると、症状がかなり進行してしまうことも考えられます。
どんな時でも、早め早めのチェックで自分の健康状態を把握すれば、選択肢も増えるのではないでしょうか。

参考資料

日本消化器病学会
 NAFLD/NASH診療ガイドライン2014