1996年12月の出来事
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雨のニューヨーク

ショッピングバッグをすっぽり

昨夜は、夕刻から急に降りだした雨がとうとう夜中まで止むことはありませんでした。
久しぶりにダウンタウンに映画(FILM FORUMというところで溝口健二監督の作品を特別上映していたものですから)を観にいったのに、帰りは、あいにくの雨。映画の内容が少々重苦しっかったせいもあるでしょうが、劇場の出口で降り注ぐ雨を見上げながらすっかり気落ちしてしまいました。

例年に比べて、今年のニューヨークはずいぶん雨が多いような気がします。仕事帰りの夫との待ち合わせのカフェに向かう道すがら、傘をさして歩いている人の少ないことに、改めて驚かされます。
もちろん朝のウェザー・リポートをしっかりチェックしてのことでしょう、万全の備えの人もいることはいるのですが・・。

ある人はジャケットをかぶったり、バックを頭にかざしたり、また、ショッピングバッグをすっぽり・・なんて人も。後は「雨?なんだそんなんもの」といわんばかりに何もかぶらず、歩調を速めることすらせず悠然と通り過ぎる人たち。

雨が降りだした途端に、どこからともなく傘売りが出現し「安いよ、安いよ」と声を張り上げ、道行く人の気をひこうとするのですが、そこに群がるのは観光客くらいのもの。多くのニューヨーカーたちは一瞥もせず通り去っていきます。
ニューヨーカー達のたくましさを、こんな時にも強く感じます。

さて待ち合わせのカフェに、いつものように20分ほど遅れて入ってきた夫の姿は、まさに濡れねずみ。
「傘は?」という私の問いに、「じきに止むと思ってさ」と彼。なんのことはない、私自身も彼が置き傘をもってくるだろうと、傘売りのそばを駆け抜けてきたばかりだったのです。
ニューヨークに住んで5年、どうやら私たちも少しばかりニューヨーカー達の仲間入りができてきたようです。

96/12/1
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