パレス・オブ・ファインアーツ

サンフランシスコとアメリカ全般との気質の違い

大小の木々に囲まれて、池の水面に映った赤レンガ色の柱をもつ濃いベージュ色の円形ドームの合間をぬって、白鳥や鴨が静かに泳ぎまわる。池の縁には、のっそりと動き回る亀もいる。
ダウンタウンの方からノース・ビーチを通り抜け、フォート・メイソンを過ぎ、何艘もの白いヨットが碇泊しているサンフランシスコ湾を右手に見ながら走るマリーナ通りをしばらく進むと、国立レクリエーションエリア、プレシディオに隣接するパレス・オブ・ファインアーツに到着する。

映画のザ・ロックやフォレスト・ガンプの中にも出てきた印象的で美しい場所だ。サンフランシスコを襲った1906年の大きな地震と火災からの復興と、パナマ運河の開通とを祝って、1915年にパナマ・パシフィック・インターナショナル・エキスポが開催された。そのエキスポの一部で保存されたのがパレス・オブ・ファインアーツである。

パレス・オブ・ファインアーツは、木々と花々、芝生におおわれた3エーカーの敷地に立っている。丸天井をもち古代ギリシャコリントの列柱で装飾されたロマネスク式円形の建物と、その両脇に何本もの柱で支えられバランスよく立つ建物が、大きな池に面して並んでいる。ローマの遺跡をイメージして作ったというデザイナーの意図がはっきりと表現されている。

敷地には、その奥の方に、650を超える展示コレクションをもつ科学博物館と千人あまりを収容する劇場がある。科学博物館では、様々な科学現象を実際に体験をしながら学ぶことができるようになっていて、子供から大人まで一日中楽しむことができる。

劇場は、一般に対して貸し出され、アマチュアの劇団が行うダンス、演劇、バレエといったアート色の強いイベントから発表会、公演会、セミナー、授賞式などのイベントのために多岐にわたって活用されている。季節によってカラフルに姿を変える木々や花々に目をやりながら、円形ドームなど古代ローマ遺跡を思わせる建物の合間をぬって歩く。

近隣マリーナ地区に住む人たちをはじめ市民や観光客にとって、パレス・オブ・ファインアーツは格好の散歩コースである。夕方に出かければ、ちょっとしたロマンチックなデートコースにもなってしまう。

緑の芝生に腰掛けて、噴水が上がり何羽もの鳥が泳ぎまわる池と、薄いレンガ色の建物を遠く眺める。時間だけがゆっくりと流れていく。我を忘れて、リラックスできる空間だ。

(2003/02)
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