82.ゼラチン(阿膠・膠・煮皮)—補血、止血に効果—

婦人の産後の体力回復、慢性病で体力が低下している状態に使用

粉末ゼリーでお菓子のゼリーをつくる、ゼライスという名前で買っていたのではないですか。これは、ご承知のようにゼラチンという変性蛋白質で、昔から重要な漢方薬でもありました。

膠は、ニカワとよみ、漢字で書くと煮皮で、新鮮な牛や驢馬(ウマ科ロバ)の皮を、毛を抜いてから何回も何回も煮込んでつくります。膠質(コラーゲン)をとことん煮出し、水に溶けだした変性蛋白質(ゼラチン)を固めたものをつかうのです。古書には「こうして煮だした膠には三種類ある。清くて薄いものは画に使用する。清くて厚いものは薬に用いる。濁って黒いものは接着剤として用い、薬にはならない。」とあります。

使い古しの靴などの革製品を煮込んで膠をとる、なんてこともあるようで、これは服用したくない。画に使用するとは墨などの絵の具に光沢や厚みを出す為に混ぜるということでしょう。
普通の薬では、カプセルなどはこれを用いてつくります。その昔、山東省の東阿県の井戸水で煮つめてできたニカワが良品とされたので、東阿県の阿をとって阿膠(アキョウ)。これが漢方薬として一般的な呼び方です。

ゼラチンは常温で個体、60度くらいで溶けますから、お菓子をつくるときも、漢方薬として服用するときも、やや温度を下げてから、溶かし込みます。煮沸してしまうと又成分が変わってしまうので、必ず他の薬草を煎じた鍋を火からおろして、一呼吸してから阿膠を溶かし込んで服用します。

その主成分は蛋白質で、さまざまなアミノ酸に富んでいます。従って漢方的効能としては、補陰、補血、一口にいえば滋養強壮の作用がつよい。婦人の産後の体力回復とか、慢性病で体力が低下している状態に使います。もうひとつの効能は止血。鼻血から下のほうのお尻の出血まで、いろいろな出血を止めるくすりに配合されます。

動物の皮を煮ることは普通経験できませんが、焼トリの"カワ"なら知っている。プリプリした食感が膠です。煮魚を一晩おくと煮汁が固まって煮凝りができますが全く同じもの、膠です。薬になるくらいですから栄養価が高い。アンコウの皮とか、豚足とか、牛スジとかテールとか、そうしたプリプリした膠質はみな健康食品です。気持ちわるがらずおおいに食べましょう。