18.素顔で外出できる自分を取り戻そう。

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オモチャのヒヨコ

社会に出たてのころから憧れている女性がいます。凛としているのにオチャメ。場の空気に応じて、いい意味で肩肘も張れるし、うんとくだけることもできる。時に叱り上手で、時に甘え上手。私よりたった8歳しか年上でないのに、いつでも何万光年も先を歩いているように見えて、だからいつも、彼女の背中を追いかけてきました。

彼女が30歳の誕生日を迎えたとき、私に言ってくれた言葉はいまでも忘れません。
1日に何時間素顔でいる?私ね、大台に乗ったから、30歳からは少なくとも1日8時間。1週間で考えたら、土日の1日は素顔で過ごしたいと思うの」。

当時の私はまだ社会に出たばかりで、朝起きたらすぐにメークをして、ひどいときには疲れ切ってメークをしたまま眠り込むというような生活をスタートしたばかり。とてもじゃないけれど、1日8時間もノーメークでいる自分なんて想像ができない時期でした。ましてや土日のうち1日ノーメークなんて!
振り返ればきっと楽しかったわけではなかったでしょうに、どうしてあんなにも仕事をしていたのでしょう。強迫観念?もちろん段取りの悪さもあったでしょう。土日のいずれかは必ず仕事をしていたのです。そして仕事をしない休みの日はデート。メークをしない日なんて、ありませんでした。

そんな私に彼女は言いました。
「そういう物理的なことを言っているんじゃないの。メークって私にとっては武装。自信の無さの現われでもあるの。もちろん、メークが自分をコーディネートする大切なツールということはわかっているのだけれど、ときとして、真の自分を隠すためにメークをすることがあるのよ。だから、私は30歳になったことを機に、ノーメークでも平気な自分になりたいなって。なぁんてね。周りは止めてくれ~って言うかもだけど」

最後は彼女らしい笑い話にしていました。
でも正直、そのときはあまりピンと来ませんでした。メークをしたって、しなくったってあんまり関係ないし、メークは女性としてのマナーだし。メークをしていても私は武装なんてしていないし。
まだ22歳だったのです。自分では大人のつもりでも、まだ物事の輪郭はつかめていなかったのです。彼女の言った言葉の意味が幼い私にはわかりませんでした。正確に言うなら、彼女の言葉の意味がわからなかったということが、いまになってわかりました。

そういうことではなく、彼女はシンプルになりたかったのだと思います。素顔で平気な自分。メークで自分をコーディネートしなくても、平気な自分。常にリラックスした自分でいたい。そういう思いから出た言葉ということ。私もキャリアを積んでわかりました。メークはとても楽しい女性だけの特権だけれど、1日が終わってメークを落とした瞬間に大きく溜め息をつく日のなんて多いこと!メークを落とした瞬間にポロポロ泣いてしまったこと、女性だったらきっとあると思います。

あれから十数年たって、わたしもノーメークでいる日が増えました。往々にして不精な性格によることも多いですが、そればかりじゃありません。何も武装しない自分。ありのままの自分でいてもいいな、と思える日があるのです。眉毛だけちゃちゃっと描いて、リップクリームを塗って、お散歩するお休みの日の気持ち良さったらありません。

最初は勇気がいるけれど、やってみるとけっこういいもの。それに、肌にとっても休息日は必要だし。今度のおやすみ。ノーメークでお散歩、いかがですか?

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