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冬場の健康法「七草粥」

古歌に「芹(せり)、なずな、御形(ごぎょう)、はこべら、仏の座、すずな、すずしろ、これぞ七草」と歌われています。七草粥とは、新春に芽を出すこれらの七草を摘み、粥に炊き込んだものです。正月七日の朝、七草粥を食べると病気をしないという言い伝えがあって、古くから年中行事の一つとなっていました。そして七草粥を食べる習慣は、今日でも受け継がれた食文化として定着しています。冬に不足しがちな栄養分を補い、また正月のおせちで疲れ気味となった胃腸をいやす理にかなった食い合わせといえます。
秋の七草が鑑賞用なのに対して、春の七草は、食べて無病息災を願ったものなのです。

1.せり

春の七草の筆頭に上げられるせりは、万葉集にも歌われるほど古くからなじみの深い日本原産の山菜です。最近では、水耕栽培したものが出回っています。日本食品成分表によると、ビタミンA(カロテン)、C、葉酸、カルシウム、カリウム、リン、鉄などが多く含まれています。漢方では、せりには利尿、降圧、去脂、鎮痛作用等があるとされ、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病に効能があります。

お正月に摂り過ぎた脂こい食物のせいで、とどこおりがちな血液の流れを円滑にしてくれます。せりには特有の香りがあり、新鮮な春の息吹を感じさせてくれます。これは葉や茎に含まれる精油中のテルペンによるもので、神経の興奮をしずめ、ストレスへの回復力を高めます。また、精油には健胃効果もあり、食欲を増進させます。そのほか、せりには解毒作用があるといわれ、肝機能の調節作用によってお正月の二日酔い気分を和らげてくれます。

2.なずな

なずなは、日本全国どこにでも生えている草ですが、せりと並んで食品成分表に載っているれっきとした野菜です。その果実の形が三味線のばちに似ているので、「三味線草」または「ぺんぺん草」とも呼ばれています。栄養成分は、ビタミンA(カロテン)・B1・B2・C、カルシウム、リン、カリウム、鉄などが豊富に含まれています。とくに、ビタミンCは110mgとレモンに匹敵します。冬場の貴重なビタミン源となります。

3.御形(ごぎょう)

御形とは、母子草(ハハコグサ)のことです。古くからのならわしで母と子の人形を作って飾り、その人形すなわち御形に供える草餅の中に入れたのが母子草でした。草全体が白いうぶげに覆われて、ふっくらしたやわらかみを感じさせます。道端や家の周りに生える草ですが、その栄養価については分かっていません。民間で、痰きり効果があり、気管支炎や風邪の予防に効果があるといわれています。

4.はこべら

はこべらは、はこべともいい、古くから七草粥に入れられてきましたが、江戸時代の初期には青菜として食用に供されていました。漢方における生薬として用いられ、葉茎を採取して日干しにしたものを、「繁縷」(はんろう)と言い、その煎汁で湿疹や子供の瘡毒を洗う療法は昔から知られていました。しかし、その効用を示す成分や栄養価についてはほとんど知られていません。

5.仏の座

春の七草粥に入れる仏の座は、キク科のたびらこのことで、シソ科のほとけのざとは違います。たびらこは、本州から九州にかけて暖かい地方に育ち、タンポポの葉に似たロゼット状の葉をつけます。田んぼの畦道に平たくへばりついている様子から田平子、そして仏様の連座に似ているので仏の座と言われています。

6.すずな

すずなは、今日でいうかぶのことです。日本では中国を経て伝わり、奈良時代にはすでに栽培されていました。栄養的にみると、葉のほうが緑黄色野菜として優れています。ビタミンA(カロテン)・C、葉酸、カルシウム、カリウム、鉄などが豊富に含まれています。根のほうは淡色野菜としてビタミンCのほか、でんぷん消化酵素のジアスターゼが含まれており、ご飯の消化を助けて胃もたれを解消します。また、生のまますりおろして汁にして飲むと、咳を止め、口の渇きをいやしてくれます。かぶには、アブラナ科に特有な辛味成分としてイソチオシアネートが含まれており、胃を刺激して食欲を増進します。

7.すずしろ

すずしろは、だいこんのことで、その栽培の歴史は古く、「日本書紀」にも載っています。食べ方は、煮物、漬物、切干、おろしなどと、その風味が日本人の嗜好に適しているため、大きさ、形、味などの異なった品種が多数出回っています。その中でも、今日では青首大根が主流になっています。葉の部分は栄養価が高く、ビタミンA(カロテン)・B1・B2・C、葉酸、カルシウム、リン、鉄などが豊富に含まれています。

根の部分には、ジアスターゼのほか、グルコシダーゼやオキシダーゼなどを含み、解毒作用があります。辛味成分のイソチオシアネートは食欲を刺激するほか、発がんの抑制効果もあるとされています。

春の七草は、はやし歌とともに包丁で刻んだと言われています。その一節に、「七草なずな唐土の鳥が日本の土地に渡らぬ先に...」とあるそうですが、現代の疫学的に解釈しますと、唐土(中国)からの鴨などの渡り鳥が日本へインフルエンザウイルスを運び風邪が流行する前に、ビタミンCの多い七草粥を食べて予防しましょうと、ここにも先人たちの知恵を垣間見ることができます。

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