食エッセンス
9.食品群と栄養


我々が毎日の食事において食物をとる際に、体が必要とする栄養素を合理的に取り入れるためには、人体が1日に必要とする栄養素の量と、摂取する各種食品中に含まれる栄養素の量を知らなければなりません。前者のためにには日本人の栄養所要量(第五次改定)があり、後者のためには日本標準成分表(五訂)があります。後者は「食品成分表」という書名で市販されていますし、しかも付録として前者が別表に載っています。さて、この二つが揃ったとしても、これらを 日常の食生活に活かすためには、どのような食品をどのくらいとったらよいのか、一般の人にはなかなかわかりずらいとおもいます。そこで、栄養所要量に準拠し、日常食生活に取り入れやすい食品群別摂取量(食品構成ともいいます)が提示されていますので、今回はこれについて説明いたします。

●6つのグループからバランスよく
我々が利用している食品は植物性および動物性に大別されますが、これに加工食品を加えるとその数は膨大となり、いざ献立の作成ともなれば、その組み合わせは無限にあるので、その選択に迷うことになります。そこで、食品をその栄養的特徴によっていくつかの食品群に分け、似たもの同志をまとめてそれらのグループに入れることにより、毎日とらなければならない栄養素と食品の組み合わせをわかりやすく示したものなのです。ここでは厚生労働省が薦める「六つの基礎食品」について述べることにします。それは次のような分け方です。

[1群]主にタンパク資源となり、そのほか脂肪やビタミンB2を多く含むもので、例えば、魚・肉・豆類(大豆およびその製品)・卵
[2群]主に無機質、とくにカルシウム源となりそのほかタンパク質、ビタミンB2を多く含むもので、例えば、牛乳・乳製品・小魚・海草(ヨード源)
[3群]主にカロチン源となり、そのほかビタミンCを多く含むもので、例えば、緑黄色野菜
[4群]主にビタミンC源となり、そのほか無機質を多く含むもので、例えば、淡色野菜や果実類
[5群]主に炭水化物(糖質)源となり、このうちビタミンB1を含むものとして、穀類やいも類、含まないものとして、砂糖
[6群]主に脂肪源となり、このうちビタミンA・Dを含むものとして、動物性脂肪、含まないものとして、植物油


以上述べたような6群の食品からバランスよく摂取することにより、1日の栄養所要量を満たすことができます。それには、まず、区分別給与目標栄養量(表1)をみて、各人の摂取目標エネルギーを基準にして区分番号(1〜8)のどれに属するかを決め、さらに区分別食品構成表(表2)にのっとり、各区分番号に応じた食品群の摂取量(単位g)を決めればよいのです。
なお、この食品構成によって供与されるエネルギーおよび各栄養素量、ならびに栄養比率を区分4についてみますと、(表3)に示すとおりとなります。
この食品構成はあくまでも実行の一つの目安であり、地域や個人差によって適用条件が異なるのは当然であり、とくに個人の食習慣、嗜好、経済性などを考慮しながら、より使いやすいものにするよう工夫すべきであると提言しています。

(1)1群の食品
魚介類:今日の日本人の食生活では、動物性タンパク質の摂取量のほぼ半量を魚介類に依存しています。魚類はタンパク質を約20%、貝類は約15%含んでいます。また魚介類の脂肪量は、魚種・季節などによってかなり違いますが、その性質は肉類の脂肪とは異なり、多価不飽和脂肪酸の含有量が多いのが特徴です。(後述)。主な魚介類のタンパク質50g当たりの脂肪量を(表4)にしました。

肉類:肉類はタンパク質を約20%含み、ミネラルやビタミン(B1・B2)の含有量も比較的多い。タンパク質中の必須アミノ酸とくにルジン、トリプトファン、含硫アミノ酸等が多く、しかもバランスがよくとれています。脂肪量は動物種、部位、飼育状態などによって異なりますが、飽和脂肪酸の含有量が多いのが特徴です(後述)。
レバーは栄養素に富んだ食品の一つで、ビタミン(A・B)やミネラル(鉄)が多く含まれています。肉類のタンパク質30g当たりの脂肪量を(表5)に示しました。

卵:鶏卵は牛乳とともに完全食品といわれるくらい栄養素が豊富に含まれているが、ビタミンCのみは含まれていません。鶏卵は卵白と卵黄と比較するとタンパク質はどちらも ほぼ同量ですが、含硫アミノ酸は卵白の方が多く、他の栄養素については卵黄の方に多く含まれています。しかし、卵黄にはコレステロールが比較的多く含まれており、成人の1日のコレステロール摂取量は卵黄2個分に相当するといわれています(表6)

大豆:豆類のなかで大豆はタンパク質の含有量が多く(約35%)、しかも良質なので、栄養上他の豆類(野菜)とは区別されています。大豆は生のままでは消化が悪いので、昔からみそ、しょうゆ、豆腐、納豆、きな粉等に加工して利用されてきました。大豆のタンパク質は、一椀のみそ汁に約2g、1丁の豆腐に約15g、小1包みの納豆に約7g含まれています。大豆はまた、19%の脂質を含み、大豆油として有用です。


(2)2群の食品
牛乳・乳製品:牛乳は完全食品ですが、鉄分が少なく、ビタミンCもほとんど含まれていません。しかし、牛乳のタンパク質は消化が良く、必須アミノ酸のバランスも良く、またカルシウムやビタミンA・B2などの有力な供給源でもあります。糖分は乳糖から成り、乳糖不耐症の人には下痢を起こしやすいが、腸内で乳酸菌の発育増殖に有効で、異常発酵や自家中毒を防ぐ働きがあります。牛乳1本分(200g)に含まれる栄養素量を(表7)に示しました。

乳製品には、牛乳をそのまま濃縮した練乳、粉末化した粉乳、発酵させたヨーグルトやチーズ、あるいは生クリームやアイスクリームなどがあります。いずれも良質のタンパク質とカルシウム源となります。

小魚類:骨ごと食べられる小魚類はタンパク質源とてよりミネラル、とくにカルシウム源として重要です。つくだ煮(いかなご、はぜ、わかさぎ、あみ、こえび等)や干物(いわし、きびなごさくらえび等)などの加工品があります。


(3)3群の食品
緑黄色野菜:科学技術庁資源調査会編「四訂日本食品標準成分表」によりますと、野菜類のうち、生の状態で可食部100g当たりカロチン600μg以上のものを、とくに有色野菜と定義し、備考欄に(有)と付してあります。しかしながら、厚生労働省では、栄養指導上の立場から、この有色野菜のほかに10種類を加え、さらに7種類を除外したものを緑黄色野菜と呼称しております。例えば、グリーンアスパラカスは有色野菜ではありませんが、緑黄色野菜であり、またとうがらしの実は有色野菜ではありますが、緑黄色野菜ではありません。緑黄色野菜は、一般にカロチン含有量が多いばかりではなく、ビタミンC含有量も多いのです(表8)


(4)4群の食品
淡色野菜:一般にカロチン含有量の少ない野菜類をいいます。キャベツ・ハクサイなどの葉菜、ダイコン・カブなどの根菜が主なものです。ビタミンC含有量は多いものから少ないものまで様々です(表9)。淡色野菜は、ミネラルや線維源としても重用です。

果実類:果実は、かんきつ類とその他の果実に分けられます。かんきつ類はビタミンC含 有量が多いが、その他の果物でも、イチゴ、カキ、パパイアなどにも多く含まれています。(表10)
果実類は、熟すると糖分(果糖・ブドウ糖)が増え、有機酸(リンゴ酸・クエン酸・酒石酸)を含む芳香のある果汁を含み、美味でそう快な感覚を与えます。その他:上記の食品のほか、野草類(ゼンマイ・ワラビなど)、海藻類(ノリ・ワカメなど)、きのこ類(シイタケ・シメジなど)があります。これらの食品には、ビタミン(A・B・C・D)、繊維などが多く含まれています。


(5)5群の食品
穀類:穀類はデンプン(50〜70%)を成分とし、タンパク質(6〜10%)も含まれています。
今日、日本人の1日の必要エネルギーのほぼ50%は穀類に依存していますが、そのうち米が40%、小麦が10%です。米に含まれる栄養素は(表11)に示すとおりです。精白米はエネルギー以外の栄養素が失われるという欠点がありますが、味が淡泊で日本人の嗜好に合い、しかも消化が良い。しかし、米のタンパク質はリジン、トリプトファン、含硫アミノ酸などの必須アミノ酸のバランスが動物性タンパク質に比べて劣るので、米で摂取エネルギーの大半を補うような場合は栄養のバランスを失う結果になります。

小麦は、含まれいるタンパク質(グルテン)の応じて、パン・めん・ケーキなどにいろいろ加工されています。小麦のタンパク質は米のものよりさらに劣るので、動物性食品を同時に摂取しないと栄養的欠陥を補えません。しかしながら、パン食では牛乳やチーズなどを一緒にとることが多いので、パン食は米食に比べてカルシウム摂取に適した食形態といえます。

いも類:ジャガイモ・サツマイモのほか、サトイモ・ヤマイモなどがあります。穀類と同様にデンプンから成るエネルギー源食品ですが、いずれも水分が多く、タンパク質も比較的少ないという欠点があります。しかし、ビタミンB1やCをかなり含んでおり、とくにビタミンCは加熱調理による損失が少ないという特徴があります(表12)

砂糖:原料によって甘蔗(サトウキビ)糖・甜菜(サトウダイコン)糖・デンプン糖などがあり、成分は前二者がショ糖、後者が麦芽糖またはブドウ糖です。甘蔗糖は、精製や着色の度合によって黒砂糖・粗糖・三温糖・白糖などの名称で呼ばれています。甜菜糖はグラニュー糖とも呼ばれています。それぞれ目的によって使い分けられ、エネルギー源となるばかりではなく、甘味が食生活を豊かにします。


(6)6群の食品
油脂類:動物性脂肪(ヘッド・ラード)と植物油(オリーブ油・大豆油など)、および魚油があります。従来日本人は脂肪摂取量が欧米人に比べて著しく少なかったが、今日では平均1人1日当たり50g前後の脂質をとっており、このうち動物性脂肪は半分以上を占めているといわれています。動物性脂肪はビタミンA・Dを含んでおり、栄養価は高いが、飽和脂肪酸の含有量が多く、多価不飽和脂肪酸の含有量が少ないのが特徴です。これに対して、植物油はビタミンA・Dを含んでいませんが、ビタミンEを比較的多く含んでいます。また、植物油には必須脂肪酸として栄養的に重要なリノール酸・リノレン酸を多く含むものがあります。オリーブ油には、1価不飽和脂肪酸のオレイン酸が多量に含まれています(表13)
一方魚油には、多価不飽和脂肪酸のEPAやDHAを多く含むものがあります。前回述べたように、動物性脂肪・植物油・魚油の摂取比は4:4:1が栄養バランスの点で良いとされています。

各表の数値は、科学技術庁資源調査会編「四訂日本食品標準成分表」、「日本食品脂溶性成分表」、「五訂日本食品標準成分表-新規食品編」等より抜粋しました。
 





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