75.シナモン(桂枝・肉桂)—漢方の「衆方の祖」—

ピラミッドのミイラの防虫剤としても

桂枝(けいし)は、漢方用語で、一般には肉桂(ニッケイ)や最近ではシナモンの方が通りがよい。樟脳でおなじみの芳香のある楠(クスノキ)科に属する「桂」の樹皮や根皮を薬や香料として使います。
畑に「桂」の苗木を植えて10年、今では大人の背より大分高くなりました。葉脈が独特の三行脈ですぐにわかります。

ニッケイの原産地はインド南部、スリランカあたりで、紀元前には、アラビア人の手でエジプトからヨーロッパへ伝わりましたが、アラビア人がシナモンの産地をヨーロッパ人に知らせなかった為、13,14世紀になってそれを知った当時のポルトガル、スペイン、イギリスの争奪戦になりました。お茶もそうでシナモンティーなどはその名残りでしょう。エジプトでは、王様の死体をミイラ化するのに防虫剤としてニッケイが使われました。

「衆方の祖」

現在シナモンの生産の中心は中国南部からヴェトナムにかけての海よりの地域です。以前、南方系の「桂」を日本の南部、高知や紀州などの暖地で栽培したことがあります。皮をはいでかんでいると甘辛い香りが口に広がり、子供のおやつにはなったようですが実用品にはならず、結局現在でも南方から毎年2.000トンくらい輸入しています。ほとんどは食品(香辛料)として使われ、漢方生薬として使われるのは20%ほどです。
ニッケ飴、八ツ橋などのお菓子や、カレーその他の煮物に、各種ソースに大量に使われます。私の得意料理の豚の角煮には、このシナモンとこれもやはり代表的な漢方薬である甘草がスパイスとして欠かせません。

くすりとしてのシナモンは桂皮とか桂枝とか書かれていますが現在では栽培した桂の枝の皮を細かくカットして使います。桂枝湯(けいしとう)という桂枝と他の生薬を組み合わせた薬は漢方処方の原点である「傷寒論」という本の冒頭に出てくる処方で、それが形を変えてあちこちに出てくるので「衆方の祖」といわれます。

南方系の桂枝が最重要な薬として多用され、寒冷地でしか採れない甘草(かんぞう)や麻黄(まおう)とミックスして、いろいろな薬に早くから使われているのをみると、古代の交通が想像以上に盛んだったと考えられます。桂枝○○湯とか桂枝○○丸とか皆さんもよくお耳にすると思いますが、桂枝の働きは広範ですがあえて一口で表現すれば、「気の巡り」を活発にするといえましょう。

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