| ●安石国からグラナダへ |
| ザクロといっても若い人たちは知らないかもしれません。フルーツ店やスー |
| パーで初秋によく探せば今でも手に入ります。赤味がかった茶褐色の厚い皮がは |
| じけて、中に赤いルビーのような珠玉がつ |
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| まっているといえば、あれかと思いつくで |
| しょうか。私が育った家の庭にはザクロの木 |
| があって毎秋、10コくらいの実をつけていま |
| した。食べもののない頃でしたから、珠玉を |
| はずして食べ、その中の小さな種をぺっぺっ |
| と吐き出したものです。甘さはあるにはある |
| が何といっても酸っぱいので子供たちが好ん |
| で食べるフルーツではありませんでした。 |
| このザクロの実の味は、人の肉の味とよく |
| 似ているといわれます。王舎城の夜叉神=鬼 |
| 子母神は千人とも万人ともいわれる子持ちで |
| したが、人の子を奪って食べるという鬼女でした。これを知った釈迦は、彼女 |
| を戒めようとして、彼女の最愛の娘を隠してしまい、子を失った親の悲しみを |
| 味わわせて諭したのです。そのうえで、どうしても子供が食べたくなったらか |
| わりにこれを食べなさいとザクロを与えた、というおはなしが仏教の経典にあ |
| ります。鬼子母神が懐に子供を、手にザクロを持っている由来で、仏教ではザ |
| クロのことを吉祥果とおめでたい呼び方をします。 |
| ザクロは、2000年前に中国の西方、ペルシャ北方の安石国からシルクロード |
| を伝わり入ってきた外来果実で、実が瘤(こぶ)に似ているから安石瘤、又は |
| 単に石瘤。ペルシャから西方ヨーロッパへも早くから伝わり、さかんに栽培さ |
| れました。西の終着点のスペインの町グラナダのグラナダはザクロの意味です。 |
| ザクロは石榴の日本読みといわれます。日本へは大分後、平安時代に薬用に |
| 持ち込まれたといわれます。当時の貴族が使った銅鏡はすぐ曇ってしまうの |
| で、石榴の実を袋に入れ、キュッキュッと磨くとクエン酸などの力で金属の鏡 |
| がピカピカになったといいます。 |
| ヨーロッパの古医書では、ザクロは根の煮汁は扁平な虫を駆出するとありま |
| す。サナダ虫の特効薬というわけです。漢方の世界でも、ザクロの東の方向に |
| 伸びた根の皮は回虫やサナダ虫を治すとあります。 |
| 漢方薬としては果皮を乾燥してくだいたものを虫下し、下痢止めとして用い |
| ます。また根皮も上述のように使います。 |